離婚についての話合いをしても何度も決裂してしまった。どうしても円満な離婚ができない。そんな時は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる事になります。しかし、芸能人や有名人でない一般人の自分は、果たして離婚調停の費用や弁護士を雇う費用を払う事はできるのだろうか、と不安になりませんか?
今回の記事では、離婚調停になった場合の弁護士費用や諸々の手続きについてお話していきます。
1.離婚している夫婦の何%が離婚調停?
離婚する夫婦の全体の1割が離婚調停で離婚をしています。
1割というと、「10組の夫婦中たった1組だけなのネ」と思われるかもしれません。しかし、日本には年間で2万件以上も離婚調停で離婚する夫婦がいるのですから、これは決して少ない数字ではありません。
①そもそも離婚調停とは?
離婚が当事者同士の話し合いでまとまらないので、家庭裁判所に「間に入ってください」とお願いをする、こんな形が離婚調停のイメージです。離婚調停の申立が受理されると、申立人へ呼び出し状が届きます。そして、指定された日程で申立人の本籍地がある最寄りの裁判所で話し合いを始めます。
夫婦同士の話し合いがうまくいかなかったことでの調停ですので、この話し合いは夫婦同士で話すことはありません。間に「調停員」という第三者が入り、夫婦の片方が調停に質問され答えていくという形で調停は進行します。
離婚調停をする中で、調停が成立することを「離婚成立」と呼びます。離婚のための調停が成立する、という事だから、離婚が成立するという意味?と思われる方もいることでしょう。
調停成立は、離婚が成立するパターンのみではなく、家庭裁判所での調停の結果夫婦として続けていく、という決断に至った場合も調停成立とします。
②女性の経済力がついてきた
離婚調停で離婚する夫婦が増えてきた背景として、離婚しても生活できる程仕事を持つ女性の割合が増えてきたという原因が挙げられます。
ひと昔であれば、亭主がいくら不倫をしても主婦は生活できないため、涙を飲んで我慢してという時代もありました。しかし、今は違います。
婚姻するカップル数が減っているため全体としての日本人の離婚数は減っているのですが、当事者同士の合意のない調停離婚は2012年には10.03%と初の10%超えを記録しました。今現在も、この数字は9~10%前後で推移しています。
2.離婚調停自体にかかる費用
さて、本題です。芸能人でも有名人でもない自分が、いくら離婚をしたいといって離婚調停はできるのだろうか?弁護士に費用は払えるのだろうか?と不安になり調停に踏み切れない方もいるかもしれません。
①弁護士を雇う費用の相場
標準的な弁護士を雇う費用(契約金)は、20~30万円です。これにプラスして、1回出頭してもらう度に3~5万円ほどかかります。
また、弁護士の手腕で無事勝利を収めた場合、報酬金として30万円程度、そして得た利益の10%程度を支払うというのが相場です。その他に、弁護士が家庭裁判所に赴くための交通費(電車代・タクシー代など)や通信費などの実費も必要です。
全体としては、最低でも50万円最高で100万円程度は予算として考えた方がよいでしょう。具体的な金額は、裁判のケースや弁護士事務所によって異なりますので、無料相談後に見積もりを数社からとって比較します。
なお、裁判にめでたく勝利できた場合は、配偶者からの慰謝料などを弁護士費用に充当することができます。また、離婚調停のための各種資料や書類の用意もお願いできます。
②弁護士に依頼しない離婚調停でかかる費用
自分にはとてもじゃないけどそんな費用は払えない、日々の生活費だけで精一杯。そんな方もいらっしゃると思います。そんな場合は弁護士に頼まず、自分で離婚調停を申し立てる事ができます。
家庭裁判所に離婚の協議をお願いするためは、以下の用意が必要です。
①印紙代・・・1200円分
②郵券・・・切手のことです。裁判所から申立をする人への連絡を郵送で行いますので、申立時に前もってその切手を提出する必要があります。必要な切手は家庭裁判所により異なりますが、概ね千円程度です。
③戸籍謄本(戸籍全部事項証明)・・・戸籍抄本と異なり、戸籍謄本は戸籍にある全員の記載があるものです。申立人の戸籍がある本籍地で役所へ行き取得をしますが、遠方の場合は郵送で取り寄せる事もできます。発行に必要な手数料は1通450円です。郵送の場合は別途郵送に必要な切手代が必要となります。
戸籍謄本は、事項の年金分割に関する書類を取得する際に求められることがあるため、2通用意しておくと無駄足となりません。
④年金分割に関する情報通知書について
離婚したいのに、年金の話が何故出てくるの?と思われるかもしれませんが、この書類の提出は「日本年金機構」が定めている「合意分割制度」によるものです。夫婦で各自国民年金に加入していた場合は別ですが、夫の扶養に入っていた主婦などの場合は、離婚時に夫婦の年金記録を分割することができます。
協議離婚の場合、この書類の提出は必須ではありませんが、離婚協議をする中で年金の分割をするかもしれませんので、あった方がいいと思われる書類です。この通知書は年金事務所の窓口で手続きができ、費用は無料です。
以上のことから、離婚調停の申立を自分でする費用は3,500円~5,000円程度となります。
3.調停にかかる期間は?
離婚調停にかかる期間は、平成23年の司法統計によりますと半数以上が「1か月~半年以内」となっています。1か月以内で終了する夫婦は7%、6か月以上1年以内が18%となっていますので、おおよそ半年くらいはかかるとみておいて良いでしょう。
この数字はあくまで統計上ですので、協議の内容によりもっと長期化する可能性もあります。結婚と違い離婚についての話し合いですので、離婚調停は精神的に決して楽しいものではありません。仕事や育児・介護などに影響がでるため、できるだけ調停の期間を短くしたいと考える人が多いのも頷けます。
4、離婚調停で弁護士をつける人が増えている?
弁護士に離婚調停を依頼する人が10年前と比べ、徐々に増えています。平成26年の司法統計によると、42.2%の申立人が弁護士をつけています。
以前は、「離婚調停では弁護士をつけず、離婚裁判になった際に弁護士を頼めばいい」という考え方もありました。しかし、最近は離婚調停で約半数近くもの人が弁護士をつけています。
5.弁護士に頼む離婚調停と自分で行う離婚調停の違いとは?
何故、離婚調停で弁護士をつける人が増えているのでしょうか?弁離婚調停で弁護士をつける場合とそうでない場合についてメリットとデメリットをまとめてみました。
①弁護士をつけるメリットとデメリット
【メリット】
- 調停で言いたいこと(あなたの主張)を整理して、しっかり調停委員に伝えることができる
- 調停で配偶者に合わなくて済む
- 経験豊富な弁護士にその場でフォローしてもらえる
- 取り返しのない失敗を防ぐことができる
- 申し立てのための準備をスムーズにできるので、時間短縮ができる
- 離婚問題で疲労している場合、精神的な安心感がある
【デメリット】
- 弁護士費用がかかる
- 弁護士を選ぶ手間がかかる
- 弁護士と意見が合わない場合もある
- ことが大げさになる
以上から、「配偶者に二度と会いたくない」、「絶対に離婚したい」、「自分で調べたり手続きする時間はない」、「100万円程度の費用なら捻出できる」、という方は弁護士をつけるメリットがあると思います。
②自分で離婚調停をする場合のメリットとデメリット
【メリット】
- 申立に関するお金の支払いが最小限で済む
- 自分のペースで手続きができる
- 自分で調べながら手続きを進めるので、離婚調停についての知識がつく
【デメリット】
- 相手が弁護士をつけた場合は、不利になる
- 離婚調停の手続きに時間がとられ、仕事や子育てがおろそかになる
- DVなどで離婚したい場合、嫌な配偶者にまた顔を合わせなくてはいけない
- 調停の場所が遠方の場合、泊りがけで家を留守にしなくてはいけない可能性もある
以上から、「弁護士に払う費用はとても払えない」、「時間は何とかやりくりできる」、「自分で手続きするのも苦ではない」、という方はご自分で申立をするメリットがあると思います。
まとめ
いかがでしたか?離婚調停での弁護士費用は、総額で80~100万円ほどかかります。どうしても親権が欲しい、DVやモラハラを受けた相手に二度と会いたくない!といった場合は弁護士をつける検討をしてもよいかもしれません。
費用的に弁護士はとても頼めない、調停員がいるなら自分でやろう、と思われる方は、法テラスという無料相談を利用するという手もあります。法テラスは、日本司法支援センターが運営している「専門家に相談したいけど、お金に余裕がない」という方のための無料の相談窓口で、全国各地に110か所あります。相談するだけでも、心が落ち着いて解決の糸口となるかもしれません。